防災教育に関する研究

Ⅰ部
研究の概要:社会教育における防災教育のグローバル展開
研究の目的
研究計画と方法
メンバー一覧
Ⅱ部
研究成果・研究業績

*本研究は、日本学術振興会科学研究費補助( 基盤研究(A) 2015-2019)を受けて行っています。

1. 研究の概要

本研究は、阪神淡路大震災や東日本大震災での被災の教訓に学びながら、想定される首都直下型地震や南海トラフ地震などの大きな災害に向けた、社会教育における防災教育のあり方を具体的に検討することを目的として行われる。日本学術振興会の科学研究費補助金を得て、5年間(2015年~2019年)にわたり、全国の14大学17名の研究者と全国の社会教育関係者が共同で研究を行う。

2. 研究の目的

東日本大震災においては、日本の社会教育における防災教育・防災学習(以降、「防災教育」)の位置づけと実践が不十分であったことが露呈し、結果として、多くの住民の命が失われるに至った。その反省を踏まえ、今後予想される首都直下型地震や南海トラフ地震などに向けて、住民が災害から命を守るための防災教育を地域で展開することが、日本の社会教育の喫緊の課題であるとの認識が広がりつつある。

本研究は、現代日本が直面する防災教育の展開という極めて重要で緊急性の高い課題に、全国の拠点大学の社会教育研究者が総力をあげて取り組もうとするものである。一方、こうした研究の成果は、海外の防災教育の発展にも貢献するものであり、グローバルな視点から海外の研究者との共同研究・実践を行う予定である。

研究の学術的背景

東日本大震災から4 年(2015年4月時点)が経過し、被災地(主として津波被災を対象とする)では、住民による被災時の避難行動や避難所運営などの経験を地域住民が主体となって記録集としてまとめ、次世代に伝えようとする活動が活発化している。これらの記録集や調査・研究結果の分析を通じて明らかになってきているのが、住民の防災訓練への参加率が高く、津波被害に対する住民の備えができていた地域では住民の犠牲者が少なかったという点である。また、そうした地域では、行政に依存せずに自治的に地域防災を進める丁寧な防災活動が日頃から行われ、住民の防災教育が進められていたことが明らかになりつつある。

共同研究者は、震災直後から現地被災地での災害ボランティア活動と並行して社会教育・公民館関係者からの聞き取り・資料収集などを行い、研究成果を発表してきた。また、和歌山や高知で南海トラフ地震に向けて、また首都圏では首都直下型地震に向けた防災教育研究に取り組んでいる。それらの研究活動をベースに、本共同研究に参加する研究分担者・研究協力者が所属する日本社会教育学会において、特別課題としてシンポジウム等を開始して課題の検討を行ってきた。その結果、被害予想を考慮した地域的展開の視点から全国の社会教育研究者に呼びかけ、個々の研究や取り組みを総合して、「防災教育」を社会教育学研究の新たな研究領域として立ち上げて、共同研究で社会教育学研究における防災教育研究の発展に取り組むに至った。

一方、海外における防災教育の研究が進み、実践も行われてきている。特にアジア・太平洋地域で防災教育の重要性が自覚され、研究・実践が積極的に行われるようになった。

期間内に何をどこまで明らかにしようとするか

  1. 社会教育における防災教育の重要性と緊急性を実証する研究
  2. 被害想定地域における防災教育プログラムの開発と有効性に関する実証的研究
  3. 特別研究課題への取り組み

    東日本大震災の教訓を踏まえて、以下の三つについて、特別研究課題として設定する。

    1. ボーイスカウト活動と防災教育に関する研究
    2. ESD(持続可能な開発のための教育)と防災教育
    3. 先住民族の知恵と防災教育
  4. 海外の実践・研究との交流と研究成果の発信

3. 研究計画と方法

概要

研究目的で挙げた4 つの柱にそって以下の通り実施する。1.社会教育における防災教育の重要性と緊急性を実証する研究は、東日本大震災災害ボランティア経験者を中心に、被災地での聞き取り・資料収集のうえで、被災地で研究会を開催する。2.被害想定地域における防災教育プログラムの開発と有効性に関する実証的研究と3.特別研究課題への取り組みは、全国の災害予想地域で計8 回のフォーラムを開催し、プログラム開発と検証を積極的に行い、可能な限り早く、研究成果を実践に応用する体制を確立する。4.海外の実践・研究との交流と研究成果の発信は、海外の防災教育研究者を招き、毎年1 回の国内での報告会を開催すると同時に、海外において本研究の成果を発表する機会を積極的に設け、直接、現地の防災教育実践者にも提供する。

平成27(2015)年度

  1. 社会教育における防災教育の重要性と緊急性を実証する研究
    東日本大震災の津波被災地での記録誌等の収集、聞き取りを行い、防災教育の重要性と緊急性を実証する研究を行う。その成果を以下の研究会を開催して、共有するとともに、防災教育のグローバル展開の際の研究・実践拠点の一つとして想定される大船渡市を巻き込んだネットワーク構想について検討する。
  2. 被害想定地域における防災教育プログラムの開発と有効性に関する実証的研究
    北海道、東北、首都圏、東海、関西、四国、九州・沖縄の各地区での大規模災害を想定した防災教育・防災学習が、公民館等の社会教育機関でどのように展開されているか、現状と課題を明らかにする第一段階の研究を行う。一方、要援護者の視点からの横断的な研究も行う。
  3. 特別研究課題への取り組み
    1. ボーイスカウト活動と防災教育に関する研究
      東日本大震災の復旧・復興支援ボランティア活動に、ボーイスカウトおよびボーイス
      カウト経験者がどのように関わったのか、またボーイスカウト活動と災害ボランティア活動に関する基礎的な研究を行う。
    2. ESD(持続可能な開発のための教育)と防災教育
      ESD に防災教育等が位置づいている海外の動向についても注目しながら、日本におけるESD としての防災教育の可能性を検討する。
    3. 先住民族の知恵と防災教育
      アイヌ民族教育研究、先住民族教育研究を行う研究者が中心となり、先住民族の口承史や口承文芸に記録として残る大災害の記憶や知恵に関する基礎的な研究を行う。
  4. 下記の研究者(予定を含む)との共同研究を行い、社会教育における防災教育が各国の成人教育分野でグローバルに展開できるようなネットワーク構築を目指す。
    アジア: フィリピン、インド、韓国、中国
    オセアニア・南太平洋: ニュージーランド、トンガ
    北米: カナダ、アメリカ合衆国
    南米: チリ

平成28(2016) 年度以降

  1. 社会教育における防災教育の重要性と緊急性を実証する研究
    社会教育における防災教育の重要性に関する研究会を、毎年、東日本大震災被災地で開催し、被災当事者も交えた実践分析や記録誌分析を継続する。最終年度(平成31)にまとめる。
    <予定>
    平成28(2016)年 宮城県石巻市
    平成29(2017)年 福島県福島市
    平成30(2018)年 千葉県千葉市
  2. 被害想定地域における防災教育プログラムの開発と有効性に関する実証的研究
    全国各地の防災教育プログラムの開発の成果を持ち寄り、毎年2 回のフォーラムを実施する。
    <予定>
    平成28(2016)年 第2 回:高知大学、第3 回:北海道教育大学釧路校
    平成29(2017)年 第4 回:和歌山大学、第5 回:仙台白百女学園大学
    平成30(2018)年 第6 回:鹿児島大学、第7 回:千葉大学
    平成31(2019)年 第8 回:首都大学東京(総括的会議)

4. メンバー一覧(研究分担者のみ)

研究代表者: 野元弘幸 首都大学東京
研究分担者: 野村 卓 北海道教育大学釧路校
(14大学16名) 石井山竜平 東北大学
槇石多希子 仙台白百合女子大学
荒井文昭 首都大学東京
金 侖 貞 首都大学東京
ハスゲレル 首都大学東京
手打明敏 筑波大学
上田幸夫 日本体育大学
長澤成次 千葉大学
田中治彦 上智大学
西川一弘 和歌山大学
内田純一 高知大学
圓入智仁 中村学園大学短期大学部
山城千秋 熊本大学
小栗有子 鹿児島大学
岩橋恵子 志学館大学